2013年08月26日
祈り釘の話 後編 (村櫛町)

近づいてみると、それは五尺ほどのワラ人形でした。
その足元には若い女物の、とばん(とずるで編んだ下駄)の履物が、きちんと
揃えられてあって、その近くに真新しい五寸釘がふたつかみほど置かれてま
した。
尚、よく見ると其の五寸釘はワラ人形のそこかしこや、とばんの履物に打ち
込まれているではありませんか。
昨夜の怪しい物音はこの釘を打っていた音だったのです。
「祈り釘だ!」
「若い娘っ子に遺恨を持って釘を打ち込んでいる男は一体誰だろう」
「娘っ子はどこの誰だろう」
三人の話は、いっぺんに村中にひろがって行きました。
するとその夜からは怪しい音はしなくなくなりました。
しばらくして村の織屋へ奉公していた若者が浜松へ出て腕を磨きたいといっ
て主人や家の者が引き止めるもの振り切って村を出て行きました。
村の誰と言うなく、その若者が祈り釘を打ち込んだという事になりました。
そんな事があって幾月位過ぎただろうか村でも評判の器量良しの娘が急に
病気になり、ひょっこり死にました。

娘は嫁入りも決まっていて、もう4・5日で式をあげるばかりになってました。
其れから間もなくして浜松へ行った若者も重い病気になり何日かを苦しみ続
けて死にました。
若者の亡骸が村へ運ばれて来て葬式が行われました。
それを見た村人達は、あまりの出来事に驚きおののき、それ以降は誰も「祈
り釘の話」をすることを慎み合うようになりました。
※このお話しは、著者が或るおばあさんから聞いたもので、其のおばあさん
は若い頃実際に目撃した話だそうです。
※参考文献:松下誠著書「私の郷土誌ノート」より
※写真協力:舞阪海幸彦さん
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Posted by 鈴木@SHOPS案内人 at 20:05│Comments(0)
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