わらべ長者の話by長谷寺

鈴木@SHOPS案内人

2024年11月05日 12:26



大きな長谷観音で知られる長谷寺。

その長谷寺にまつわるお話です。

昔、身分の低い若い侍がいました。

身寄りもなく一人ぼっちで、将来に何の希望もありません。

そこで観音さまにすがろうと、長谷寺にやってきて、毎日毎日祈っていました。

やがて21日目の明け方のこと、夢の中に見知らぬ男が出てきて、「おまえには戒めの
心がなく、あれこれ申してけしからんが不憫に思う。暗闇の中でおまえの手に触れる
ものがあったら、決してそれを捨ててはならぬ」と言うと男を追い立てるのです。

男はあわてて寺を出ようとしましたが、大門の所でつまづいて倒れてしまいました。



起き上がろうとした手には、藁の束を握ってます。

「これはきっと観音さまが授けて下さった藁に違いない。

それにしても、あまりに情けない」と、思いながら歩いて行きました。

すると、一匹のアブが顔の前に飛んできました。

うるさいので捕まえて藁にくくりつけて歩いていると、長谷参りの親子が通りかかり
ました。

アブを欲しいと言うので与えると、その代わりにみかんを3個くれました。



男は藁一束がみかん3個になったと喜び、さらに歩いて行くと、今度は喉が渇いて
困っている旅の女に出逢いました。

男がみかんを与えると、お礼に絹の反物をくれたのです。

その夜泊まった宿で、下僕を連れた旅人の自慢の馬が、病気にかかり死んでしまい
ました。

男は、女にもらった反物と死んだ馬を交換したのです。

そして長谷寺に向かって、「どうぞ、馬を生き返らせて下さい」と念じたところ、
馬はゆっくり頭をもたげて起き上がったのです。



喜んだ男は、馬を京の都へ連れて行き、その後大きな財を得て、幸せに暮らしたと
いうことです。

これもすべて長谷観音の御利益に違いないと思った男は、改めて長谷の観音さまに
感謝し、前よりいっそう信心したのです。


※観音霊場・西国三十三所の昔話より

関連記事